【コラム】動物園は楽しく学んでなんぼ

初めましての方は初めまして。
よく各地の動物園に行くしがない来園者の一人です。
先日Twitterにて以下の投稿をしたところ、多くの反響をいただきました。



反響の多くは掲示物を読まないことに対する嘆きや罵倒、YouTube投稿者に対する非難などでしたが、中には「どうしたら見てもらえるか」という具体案を考える方も見られました。

個人的には「見向きもせずに」というネガティブな印象を与える表現や「YouTubeで」という具体的な対象を明示してしまう書き方をしてしまったことにより、読み手の反応もまたそのあたりに終始しがちになってしまった点が反省点だと思っていますが、特に嘘をついたり誇張をしている訳でもありませんし、実際ややネガティブに受け取ってしまったことも事実ではあります。

しかし、それらを一度棚上げして持論を言わせていただくならば、動物園は楽しく学んでなんぼ です。

掲示物を読まない来園者に対して諦めたり、ましてや非難する場所ではなく、来園者の大半を占める彼らに いかに楽しく学んでもらえるか を考える場所です。
押しつけがましくてもいけませんし、説教くさくてもついてきてくれません。
そのバランスが非常に難しいのですが、それでもそれを諦めずに少しずつ少しずつ啓蒙していくのが、現代における動物園です。

誰かや何かを責める前に、動物や動物園が好きなあなたは、動物園が伝えたいことをくみ取れていますか?

私自身それが出来ているなどと傲慢なことは言えませんが、動物園のことを知ったときや現地に行ったときには、その施設が何を伝えたいのかに耳を傾けたいものです。


ところで、今回の沖縄こどもの国におけるコツメカワウソの展示においてはどのような改善策があるかを考えてみましょう。
色々な方法が考えられますがやはり個人的には 楽しく学ぶ という一点は譲りたくないところです。
そうなると、動物展示側にあるのはあまり賛成できません。それは観察という機会を妨げる要因になるからです。
事前に掲示物を読ませるゾーンや機会を設けるのもアリですが、先入観なしに動物を素直に見たときの「かわいい」「かっこいい」「きもちわるい」という気持ちの発露も尊重したいです。そうなってくると、やはり自然にさりげなくパネルを読んでもらう確率を上げるのが良いと思います。

床に動物の足跡をつけて視線誘導をしてもいいかもしれません。あとはスタンプラリーなどを催して、スタンプをパネル側に設置するのも良いかもしれませんね。あるいは率直にガイドの時間を設けるのも効果的です。
潤沢なリソースを割けるのであれば、放飼場そのものを壮大にするという方法もあります。そちらについては過去に記事を書いたことがありますのでお暇があればご覧ください。

>> コツメカワウソ と動物園・水族館にできること│ZFC.jp


さて、反響の中には「どんなに多くのお客様に伝えてもYouTubeの影響力が大きすぎて心が折れる」という言葉もありました。恐らくそれは多くの現場が抱えている悩みでもあり、門外漢である自分には推し量ることのできないつらさなのだろうと思います。

ですがそれでも、目の前にいる人に伝えることを諦めてはならないのが動物園なのだと思います。
動物園で得た知識が与太話に惑わされないよう、少しずつ信頼関係を築いていき、一人でも多くの仲間を作っていく、それはとても大変で難しいことです。しかし、一人一人ができるほんの少しのことを積み重ねて続けていくことにより、一歩一歩確実に目標へと進んでいくことこそが、動物園という場所の魅力であり役割でもあると私は思っています。

色々と話が脱線しましたが、動物園をライトに楽しむ人にも、がっつり楽しむ人にも、等しく気づきや学びが得られる場所であると良いですね。
動物園は楽しく学んでなんぼ です。

2023年7月31日 | snow

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