【今日の動画とは】
トップページでランダムに表示される動画の中から良さげなものをピックアップして話を広げてみようというコーナーです。
今日の動画はコツメカワウソのパクパクタイム (市川市動植物園) 2018年3月4日です。
千葉県にある市川市動植物園では飼育員さんお手製の遊具による名物「流しカワウソ」を見ることが出来ます。
ご覧いただければ分かる通り、カワウソはめっちゃ泳ぎます。水と共にある生き物です。
言うなればヌートリアとかアシカとかアザラシみたいなもんです。分類的には同じイタチ科としてラッコが近いです。
飼えると思いますか? 自宅で。
今でこそコツメカワウソの密輸問題が叫ばれ、カワウソ=ペットといった認識は徐々に薄れてきていると感じるのですが、密輸の問題があろうとなかろうとそもそも自宅で飼えるもんじゃないんですカワウソは。
例えばペンギンは人気もありますし稀にペットショップで売られていることもありますけれど、そうそう飼おうとは思いませんよね。
それは「ペンギン=南極に住む」という認識(一部誤認)が人々の間に根付いているからです。
「寒く無いとだめ」「水が無いとだめ」「飼うのは難しそう」と多くの人が思います。「飼いたい」とは思っても「飼おう」とは思わないのです。
一方で「カワウソ=水辺の生き物」という当たり前の認識が、一般の方には十分に浸透していません。
ペットのように扱う可愛らしい姿が切り取られて世間に拡散されたりするのも人々が「飼える」と誤認してしまう要因ではあるのですが、そういった時にその生き物の生息地や生態に関する知識がきっちりしていればそこですぐに「飼おう」とはならないのではないか、と思うのです。
では正しい知識を浸透させ、認識を改めてもらうために動物園・水族館では何が出来るのか。どうしたら良いのか。
掲示物などで密輸問題に触れたり、飼育に適していない理由を説明している園館もありますが、皆が皆読んではくれません。
見る人全てに訴えかけ、最大限の効果を発揮する方法。それは立派な放飼場を用意することです。
水も緑も豊かで、広く手の込んだ放飼場で来園者の誤った認識をぶん殴るのです。
「カワウソはこのように水辺に生息する生き物であり、ご家庭で飼うものではありません。自然に生息する野生動物です」ということを一目で分からせるのです。
それでもなお「飼いたい」と思う人はよほどの傲慢か想像力が欠如しているとしか言えません。
そして多くの動物園・水族館はそういった放飼場が用意出来ないからこそ、掲示物などで言葉を尽くしているのです。
むしろちゃんとした放飼場も用意せずに言葉すらも尽くしていない園館は動物に対する誤った認識を流布しているだけです。
動物が可愛いということだけを伝えたいならばそれはアニマルカフェと何が違うのか、という話です。
「動物園」という言葉には幅や違いがあり、その曖昧さゆえに時には揶揄されたり軽視されたりすることもあります。
結局そのしわ寄せがどこに来るかと言うと、動物とそこで働く人々です。
言葉に対する人々のイメージはとても大切なことです。
話が逸れました。では具体的にどんな放飼場が良いのかと言うと、一例として個人的にはアクアマリンふくしまを挙げたいです。
ユーラシアカワウソ (アクアマリンふくしま) 2018年12月3日
全面に押し出した巨大な水槽、奥に見える木々に緑、そして群れで暮らすカワウソたち。素晴らしいの一言です。
来園者との接触も無いので、カワウソの世界と人の世界が明確に区切られているのもポイントです。
まるで自然にいるカワウソの姿を垣間見ているかのような没入感を得ることが出来ます。
ぜひ現地でご覧いただき、姿が見えない時や寝ていた時は時間を置いてまた観察してみて欲しいです。
もちろんこの他にも良い施設は沢山あります。
「良い放飼場」とは何か、その展示は何を意図しているのか、何を伝えたいのか、そういったことに着目してみると動物園・水族館をまた違った目線から楽しむことが出来ると思います。
毎度の注釈ではあるのですが、動物園や水族館に対して全てがかくあるべしなどとは思いませんし、動物たちの可愛らしい姿やふれあいなども自分は大好きですが、かと言って全てが全て「そう」では未来が無かったり無責任だろうなぁとも思うのです。
なのでせめて公的な施設はそこんところちゃんとして欲しいと個人的には願うばかりです。
現在カワウソを個人で飼育されている方を非難するつもりはありませんし、その子と共に幸せならそれで何よりなのですが、その様子を見て何の疑問も抱かない人々の知識と認識は動物園や水族館を通じて変わっていって欲しいと思います。
2020年9月9日 | snow
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