【今日の動画とは】
トップページでランダムに表示される動画の中から良さげなものをピックアップして話を広げてみようというコーナーです。
今日の動画はニシゴリラ の『小(ショウ)』 (浜松市動物園) 2018年7月1日です。
ニシゴリラの『ショウ』は目のコブが特徴的な個体ですが、重大な病気というわけではないため経過観察中とのことです。
現地の浜松市動物園では症状と手術をしていない理由も掲示されています。
この掲示から分かるのが、世間一般には豪快で力強いとされるゴリラがそれだけ神経質な性格かということ、そしてもう一つ個人的に驚いたのが、「目のこぶを飼育員さんが触っても嫌がらない」という点です。
ただでさえデリケートそうな顔の部分に触れることが出来る飼育員さんは、一体どれだけこの『ショウ』から信頼されているのでしょうか。
信頼関係を得たであろう要因は、次の画像からもうかがうことが出来ます。
左側2つの掲示物から、いかに飼育員さんが『ショウ』の自主性を尊重しているのかが分かります。
ゴリラとしてよりも、『ショウ』という個として動物と接しているのでしょう。
それは同時に種としての幸福を手放す行為かもしれませんが、それは動物園が生業とする「飼育」という枠組みにおいては多かれ少なかれ避けては通れないものです。
種としての幸福を追求するには大規模な取り組みが必要とされ、時にそれは一つの園では手に余るほどです。
その限られたリソースの中で自らに出来る範囲で動物たちに幸福や快適な生活を提供するのが、飼育員さんというプロの方々なのだと思います。
もう一つ、上記の画像の右側の掲示にて、ゴリラの背中について書かれています。
動物が動かない、あるいは顔を見せないからと言って見所が無いと判断するのはちょっと待ってという記事ですね。
特にゴリラの場合はシルバーバックという立派な特徴があり、むしろゴリラの個性を十二分に感じられるのが「背中」なのです。
そういった見方・発見を教えて魅力を伝えたいという気持ちが感じられます。
ショウのプロフィールにはゴリラ自身の特性の他、左下には「ニシゴリラです」と書いてあります。
ニシゴリラとはなにか、ゴリラとの違いとは? と疑問に思った人のためにも別の掲示物が用意されています。
一言で「ゴリラ」と言っても4つの種類に分かれていることが分かります。
写真もあるのでそれぞれの違いについてもよく分かりますね。
さて、ゴリラの展示場周辺の掲示物だけでもこれだけの情報がありました。
これに加えて現地では『ショウ』という生体を開園から閉園まで、好きな時間に好きなだけ観察することが出来ます。
そこから得られる刺激や発見はどれほどのものかワクワクしてきませんか?
ある人は『ショウ』の顔や背中だけを見て「痛そう」「変な顔」「つまらない」と言って去ってしまうかもしれません。
ある人はそのコブがなぜ出来ているのか、痛くはないのかと疑問に思い掲示物を見るかもしれません。
ある人はその背中にゴリラの力強さと哀愁を感じるかもしれません。
ある人はただの「ゴリラ」という認識から、個性、あるいは多くの種があることを知るかもしれません。
その場にある情報は変わらないにも関わらず、人によって得られる体験は千差万別です。
来園者の「なぜ」や「すごい」に耳を傾けて手を差し伸べることが出来る動物園は「良い動物園」だと自分は思います。
2020年8月24日 | snow
Tweet『小(ショウ)』 | 雄・1981年12月 浜松市動物園 来園 |
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